脂質は体にとって必要なエネルギー源ですが、適切な量が決まっています。脂質の重要性と摂取量について、正確な情報を知らないままの方が多いのが事実です。脂質とはいえ、避けるべき高脂質の食品もあるので注意が必要です。
この記事では、脂質の種類や必要量、健康への影響について解説します。記事を読めば、脂質の必要摂取量がわかり、毎日の食事をより健康的に調整できるようになります。
★この記事の執筆者★
- ミドリ
- 食品・農業系ライター。元自然食品店勤め10年のオーガニックコンシェルジュです。畑作業が趣味。
- 菜々ちゃん
(野菜の妖精) - ・ミドリの食の師匠(?)
・野菜にまぎれて
やってきた妖精
脂質とは体に必要なエネルギー源
脂質は私たちの体にとって重要なエネルギー源です。脂質は1グラム当たり約9キロカロリーのエネルギーを提供し、炭水化物やタンパク質の約2倍です。
長時間持続する活動や、エネルギーが不足しているときに特に重要な栄養素になります。
脂質はホルモンの合成や細胞膜の構成といった、他の重要な生体機能にも関与しています。脂質は多方面にわたり体の健康を支えるため、適切な量の摂取が大切です。
脂質の体内での役割
脂質は、主にエネルギー源として機能し、炭水化物やタンパク質とともに三大栄養素の1つです。脂質には以下の役割があります。
- 細胞膜の構成成分として必須であり、細胞の正常な機能を支える
- 脂溶性ビタミン(A、D、E、K)の吸収を助ける
- 体温維持と臓器保護のための断熱材およびクッション材として機能する
- ホルモンやその他の生理活性物質の合成に関わる
- エネルギー源として機能し、体内で長時間のエネルギー供給をする
脂質の中でも、必須脂肪酸は体内で合成できないので食事から摂取する必要があります。
体全体の生理的プロセスに影響を与える重要な役割を持っているため、意識して摂取しましょう。
1日の脂質の推奨摂取量
成人における1日の脂質の推奨摂取量は、エネルギー摂取量の20〜30%に設定されています。具体的には、女性では約50〜70グラム、男性では約60〜80グラムが望ましいです。
脂質の適切な摂取量は、年齢や性別、活動レベル、健康状態などで異なるので、自身と照らし合わせながら確認しましょう。
年齢・性別による脂質摂取量
年齢と性別によって、適切な脂質の摂取量は異なります。幼児から高齢者まで、各年齢層に推奨される脂質の割合があり、割合に応じた食事管理が健康を維持する上で重要です。
年齢・性別による脂質摂取量の割合は、以下のとおりです。
- 幼児(1〜3歳):男女ともにエネルギー摂取量の30%程度
- 子ども・小学生(4〜12歳):男女ともにエネルギー摂取量の25〜35%程度
- 中高生(13〜18歳):男性はエネルギー摂取量の25〜30%、女性は25〜35%程度
- 成人(19歳以上):男性はエネルギー摂取量の20〜30%、女性は25〜35%程度
- 高齢者(65歳以上):男女ともにエネルギー摂取量の25〜35%程度
活動レベルにもとづく脂質摂取量
脂質の必要量は、個々の活動レベルに応じても異なります。
活動レベルが低い人は、基本的な代謝活動に必要な脂質で十分です。エネルギー摂取量の約20%を脂質から摂取すれば問題ありません。
中程度の活動レベルの人は、運動による追加のエネルギー消費を補うため、エネルギー摂取量の25%が目安です。
高い活動レベルの人、特にアスリートの場合は、エネルギー摂取量の30%まで脂質を増やすことが推奨されています。
活動レベルによって、結構差があるのね。
脂質の種類と特徴
脂質は私たちの健康に欠かせない栄養素であり、種類によって体への影響が異なるのが特徴です。脂質は、飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸、トランス脂肪酸の3種類に分類されます。
それぞれの脂質の特性を知ることで、どの食品を選び、どのように摂取すれば良いかを把握できます。
飽和脂肪酸
飽和脂肪酸は、室温で固体の状態であることが多いです。動物性脂肪ではバターやラード、チーズに多く含まれており、植物性脂肪ではココナッツオイルやパーム油に豊富に含まれています。
飽和脂肪酸を過剰に摂取すると、心血管疾患のリスクが高まる可能性が高いです。米国心臓協会では、飽和脂肪酸の摂取をエネルギー摂取量の5〜6%未満に抑えることを推奨しています。
» 米国心臓協会(外部サイト)
健康を保ちつつ、適切な食生活を維持するためにも、摂りすぎには注意しましょう。
不飽和脂肪酸
不飽和脂肪酸は、一価不飽和脂肪酸と多価不飽和脂肪酸の2種類があります。一価不飽和脂肪酸にはオレイン酸、多価不飽和脂肪酸にはリノール酸やαリノレン酸が含まれているのが特徴です。
不飽和脂肪酸は、心血管疾患のリスクを減らす効果があるとされています。オリーブオイルやアボカド、ナッツ類などの食品に豊富に含まれており、適量を食べれば健康維持に効果的です。
オメガ3脂肪酸とオメガ6脂肪酸のバランスを適切に保つことも、健康を維持する上で大切です。
トランス脂肪酸
トランス脂肪酸は、多くの加工食品に含まれている脂肪酸の一種で、健康に悪影響を及ぼす可能性があります。主ファストフードやスナック菓子などの高脂質食品に多いです。
トランス脂肪酸の摂取は、悪玉コレステロール(LDL)の増加や善玉コレステロール(HDL)の減少をもたらします。心血管疾患のリスクが高まるため、健康を守るためにも摂取を控えることが大切です。
世界保健機関(WHO)によれば、トランス脂肪の摂取は全カロリーの1%未満に抑えることが推奨されています。
1日に脂質を過剰摂取したときの影響
脂質を過剰に摂取すると、短期的および長期的な健康上の問題が生じやすくなります。消化不良や胃もたれが起こりやすくなり、一時的に体重が増加する可能性も高いです。
脂質の摂りすぎがどのような健康問題を引き起こすか理解しておきましょう。
脂質の摂りすぎが引き起こす健康問題
脂質の過剰な摂取は、心血管疾患や肥満、2型糖尿病などの健康問題を引き起こす可能性があります。体内で脂質が適切に処理されず、血中の脂質濃度が異常に高まることが原因です。
脂質の摂りすぎが引き起こす健康問題は以下のとおりです。
- 心血管疾患
- 肥満の原因
- 2型糖尿病
- 高脂血症
- 肝臓疾患
- 慢性炎症
- 胆石の形成
脂質の摂取量を適切に管理し、質の良い脂質を適量摂取することで予防できます。
適切な脂質の摂取は、健康を維持する上で欠かせない要素であり、過剰にならないよう注意が必要です。
高脂血症と心血管疾患のリスク
高脂血症は血液中の脂質が異常に増加した状態であり、心血管疾患のリスクを高めます。LDL(悪玉コレステロール)が増えたことで動脈硬化が進行し、心筋梗塞や脳卒中といった健康問題を発生させます。
HDL(善玉コレステロール)の低下も心血管疾患のリスクを高めるため、脂質のバランスが重要です。健康的な食事や定期的な運動を取り入れることで、リスクを減らせます。
1日の脂質摂取量が足りないときの影響
脂質は体のエネルギー源だけでなく、細胞の構成要素や体温の維持、ビタミンの吸収にも欠かせません。1日の脂質摂取量が不足すると、体にさまざまな悪影響が生じる可能性があります。
脂質不足による健康問題や必須脂肪酸の不足による影響を確認しましょう。
脂質不足が引き起こす可能性のある健康問題
脂質は、皮膚や髪の健康を維持するだけでなく、ホルモンバランスや神経系機能の正常な動作にも重要な役割を果たします。脂質不足が引き起こす可能性のある健康問題は以下のとおりです。
- 皮膚の乾燥やかゆみ
- 免疫機能の低下
- 髪の健康問題(抜け毛やツヤの喪失など)
- 生殖能力の低下
- ホルモンバランスの乱れ
脂質を適切に摂取することで予防できます。
毎日の食事でバランス良く脂質を摂る意識を持つことが大事なのね。
心血管系疾患や神経系の機能障害のリスク
脂質の中でも、必須脂肪酸は体内で自ら生成できないため、食事からの摂取が必要です。不足すると、血管の弾力性が低下したり、神経系の働きが乱れたりします。
不足した状態が続くと、心臓病や脳卒中などの心血管系疾患、神経系の機能障害のリスクが高まります。
脳細胞間の情報伝達が上手くいかなくなり、記憶力や集中力の低下を引き起こす可能性も高いです。必須脂肪酸は、体の重要な機能を守っていることを知っておきましょう。
脂質が豊富に含まれる食品と選び方
良質な脂質は、適量を摂取することで体の健康を支えます。オメガ3脂肪酸は心臓病のリスクを低減する効果があり、不飽和脂肪酸は全体的な心血管の健康を促進します。
積極的に摂取したい脂質と避けるべき脂質の食品を確認しましょう。
良質な脂質を多く含む食品
オメガ3脂肪酸を多く含む食品は、炎症を減少させて心血管系の健康をサポートします。体内で生成できない必須脂肪酸も豊富に含まれているので、以下のような食品を積極的に摂りましょう。
- アボカド
- オリーブオイル
- ナッツ類(アーモンドやクルミ、カシューナッツ)
- フラックスシード(亜麻仁)
- さけ(サーモン)やまぐろ、いわし
- チアシード
- エクストラバージンココナッツオイル
不飽和脂肪酸は抗酸化作用も期待できるため、体に良い影響を与えます。
避けるべき高脂質食品
高脂質食品は脂肪の蓄積にもつながり、さまざまな健康問題を引き起こす可能性があります。高脂質食品に含まれる油は、健康に悪影響を及ぼす脂肪酸を多く含み、飽和脂肪酸やトランス脂肪酸が多いです。
なるべく避けたい高脂質食品は以下のとおりです。
- 揚げ物やファストフード
- 全脂肪の乳製品(フルクリームミルク、クリーム)
- 極端に脂身の多い赤身肉や加工肉(ソーセージ、ベーコン)
- マーガリンやショートニング、その他のトランス脂肪を多く含む食品
高脂質食品を避けることで、より健康な体を維持できます。
脂質と相性が良い食材
脂質と相性の良い食材を知ることは、健康的な食生活を送る上で重要です。日常の食事で適切な脂質を摂取することで、ビタミンの吸収を助け、体内のエネルギー源として機能します。
脂質と相性が良い食材は主に以下の3つです。
- 脂溶性ビタミンを含む食材
- 食物繊維が豊富な食材
- 抗酸化作用を持つ食材
単独で摂るのも良いですが、バランスよく組み合わせることで、さらに健康効果を高められます。
脂溶性ビタミンを含む食材
脂溶性ビタミンは健康な体を維持するために不可欠で、ビタミンAやD、E、Kが代表です。ビタミンは脂肪と一緒に摂取することで体内への吸収が促進されます。
ビタミンを豊富に含む、主な食材は以下のとおりです。
- 魚肝油(ビタミンA、D)
- にんじん(ビタミンA)
- ほうれん草(ビタミンA、E)
- アボカド(ビタミンE、K)
- かぼちゃ(ビタミンA、E)
- 肝臓(ビタミンA、D)
- 卵黄(ビタミンAやD、E、K)
- ナッツ類(ビタミンE)
- ブロッコリー(ビタミンK)
- バター(ビタミンA、E)
適切な食材を日々の食事に取り入れることで、全体の健康を支えることが可能です。
食物繊維が豊富な食材
食物繊維は健康維持に欠かせない栄養素で、消化を助けるとともに、腸内環境を整える効果があります。野菜や果物、全粒穀物などに豊富に含まれています。
ほうれん草やブロッコリーといった緑黄色野菜に食物繊維が多く含まれており、日々の食事に取り入れやすいです。
オートミールやキヌアといった全粒穀物も、朝食やサラダのトッピングとして取り入れやすく、食物繊維の良い供給源となります。
果物の中でもリンゴやラズベリーは食物繊維が豊富で、おやつやデザートとして手軽に食べることが可能です。
抗酸化作用を持つ食材
抗酸化作用を持つ食材は、体内で発生する有害な物質を無害化し、健康維持につながります。抗酸化作用が高い食材は以下のとおりです。
- ブルーベリー:アントシアニンを豊富に含み、視力保護や心臓病リスクを軽減する
- カカオ:フラボノイドが豊富で、心血管系の健康をサポートする
- トマト:リコピンを多く含み、がん予防や皮膚健康維持に役立つ
- クルミ:ビタミンEを豊富に含み、脳の健康を支える
- ほうれん草:ビタミンCやE、カロテノイドを含み、体全体の酸化防止になる
- 抹茶:カテキンが豊富で、抗炎症や抗ウイルス作用も持つ
- オリーブオイル:ポリフェノールを多く含み、心臓病や炎症のリスクを抑える
- ターメリック:クルクミンを含み、抗酸化作用と抗炎症作用を持つ
意識的に抗酸化作用を持つ食材を日常的に取り入れることで、健康を維持し病気のリスクを低減できます。
» 健康維持のために重要な栄養バランスの基本と整え方
1日の脂質量に関するよくある質問
脂質についての正しい知識は、健康的な食生活を送る上で重要です。多くの方が疑問に感じるよくある質問を紹介します。
脂質の適正な1日の摂取量や脂質の健康的な摂取方法を知って、実生活に活かしましょう。
脂質の適正な1日の摂取量は?
成人の場合、1日のエネルギー摂取量の20〜30%を脂質から摂りましょう。1日のエネルギー摂取量が2,000キロカロリーの場合、脂質の割合は440〜660キロカロリーであることが望ましいです。
脂質1グラム当たり約9キロカロリーなので、49〜73グラムの脂質が必要です。
脂質の中でも、飽和脂肪酸はエネルギー摂取量の10%未満、トランス脂肪酸はエネルギー摂取量の1%未満を目安としましょう。
脂質の健康的な摂り方は?
健康的な脂質が豊富な食品には、オリーブオイルやナッツ、アボカドがあり、普段の食事から取り入れると効果的です。魚を週に2回以上食べることで、EPAやDHAといった脂肪酸を摂取できます。
加工食品やファストフードなど脂質の質が低い食品は避け、バランスの良い食事を心がけることが大切です。
脂質の摂取が不足するとどうなる?
脂質の摂取が不足すると、エネルギー不足や栄養素の吸収障害が起こる可能性があります。必須脂肪酸が不足すると、皮膚の乾燥や免疫力の低下、心血管系疾患や神経系の機能障害のリスクが高まります。
健康を維持するためには、適切な量の脂質を摂取することが必要なのね。
ダイエット中でも脂質を摂取して良い?
ダイエット中でも脂質は必要となります。脂質はエネルギー源であり、体の機能を維持するために欠かせません。
ただし、質の良い脂質を選ぶことが重要です。アボカドやナッツ、オリーブオイルなどの健康的な脂質の摂取を意識しましょう。
飽和脂肪酸やトランス脂肪酸を控えることで、ダイエットの効果を高められます。
まとめ
脂質は私たちの体に不可欠な成分で、エネルギー源としてだけでなく、細胞の構成やホルモン生成にも欠かせない役割を果たします。
健康を維持するためには、脂質の摂取量を適切に管理することが重要です。
脂質を摂取する上で覚えておきたいポイントは以下のとおりです。
- 推奨される1日の脂質摂取量は年齢や性別、活動レベルで異なる
- 飽和脂肪酸、不飽和脂肪酸、トランス脂肪酸の3種類がある
- 脂質の過剰摂取は高脂血症や心血管疾患のリスクを高める
- 揚げ物や加工肉などの高脂質食品はなるべく避ける
脂質についての正しい知識とバランスの取れた摂取が、健康維持につながります。
» 食生活を見直す!より健康的な生活を送るための具体的なステップ
» 1日の目安の塩分量を解説!