





★この記事の執筆者★

- ミドリ
- ✅ 食品・農業系ライター
✅ オーガニックコンシェルジュ
✅ 元・自然食品店員10年
✅ 無農薬農家さん指導のもと畑作りを勉強中

- 菜々ちゃん
(野菜の妖精) - ✅ ミドリの食の師匠(?)
✅ 野菜にまぎれて
やってきた妖精
自然栽培とは何か?
自然栽培とは、肥料や農薬を使用しません。自然栽培は、生態系の循環の力で野菜や果物を育てる方法です。環境に優しく、安全で健康的に作物を育てられます。

自然栽培に対し、農薬・肥料を使う一般的な農法を「慣行栽培」と言います。あわせて覚えておいてね。
自然栽培の主な特徴は、以下の通りです。
自然栽培の特徴
・農薬、肥料を使わない
・耕さない(不耕起)
・草や虫と共生を図る
・種は買わず自家採取する
農薬、肥料を使わない

自然栽培では肥料・農薬は使いません。農地の生態系を壊し、環境汚染の原因となるからです。肥料の代わりとなるのは、あたりにに生えているたくさんの雑草。枯葉や小枝、小動物や虫のフン、亡骸などです。自然の力で分解され積り積もって肥料となります。
もちろん放ったらかしではありません。こまめに雑草やワラなどを畑に与え、微生物を増やします。

自然栽培では生態系の力を最大限に利用します。肥料や農薬は必要ないのよ。
- そもそも植物に肥料は必要ない
- 田畑以外の場所にも植物は繁っています。山にも森にもアスファルトの割れ目からでさえ、植物は勝手に育ちます。
植物を育てているのは生態系の循環です。枯れた植物、動物の排泄物、死骸などを微生物が分解する→植物の栄養分になる→植物は虫や動物のエサになる。自然界で栄養分が循環しています。
農作物に肥料を与えるのは、たくさん収穫できて品質も安定するからです。
耕さない(不耕起)

基本的に人は耕しません。耕すと、土の中の微生物が死んでしまったり、活動を阻害されたりするためです。代わりに耕してくれるのが植物の根。植物は栄養分を求めて根を発達させます。自然栽培は肥料を与えないため、より深く深く根を伸ばします。不耕起でも土がふかふかなのは、深く伸びる根や横に広がる根が土を耕すからです。
植物の根のおかげで、土の中に空間が生まれ、水はけや通気性が良くなります。様々な大きさの土の粒が団子状になり、塊の中で水分が保たれるため、保水性が高いです。水や空気が通ることで、多種多様な生物が土の中で活動できます。
チェックポイント
自然栽培では、耕さないことで土の中の生態系を保持し、作物の成長に役立てます。
虫や草と共生をはかる

自然栽培では、虫や雑草と共生を図ります。畑づくりにおいて、虫や雑草は敵視されがちです。しかし、自然栽培では以下のように考えます。
自然栽培における虫や雑草の捉え方
虫も雑草も自然界からのメッセージと捉えます。虫が来るのは作物が弱っているからです。雑草は土を守り、耕し、生態系を維持します。
虫が来る理由
虫が来るのは、作物の状態が良くないから、という捉え方です。隣同士の野菜でも、片方は虫に食べられてボロボロ、片方は被害なし、という状況を見かけることがあります。弱った作物は虫に淘汰させ、元気な作物だけを残そうとする自然の摂理と考えます。虫に食べられるのは「野菜が弱っている」というメッセージです。
雑草が生える理由
雑草が生えるのは、土を守り、耕し、生態系を維持するためです。雑草が生えると、乾燥や地温の変化から土を守ります。草の根は、下へ横へと広がり、土を耕す耕運機です。
特定の雑草が多く生える場合、土壌が特定の状況に陥っていると考えます。草の種類によって、土壌が酸性かアルカリ性か、有機物が多いか少ないかなど、おおまかに推測可能です。雑草は土壌の状態を改善するためにあると捉えます。
雑草が生えると様々な微生物や虫、小動物の住かとなります。豊かな生態系は、栄養分が正常に循環している証です。作物が元気に育つ環境が整います。

雑草も虫も「必要だから、そこにいる」という考えです。
自家採取する

自然栽培では基本的に自家採取を行います。自家採取とは、自分の田畑で育った作物から種を採ることです。自家採取することで、土地に合った種になります。
慣行栽培でも有機栽培でも、種を購入することが一般的です。しかし、購入した種は農薬などで汚染されている危険性があります。植える土地の気候風土に合わないことも多いです。種は自家採取を続けると、自分たちの土地に適応していきます。強くて育てやすい種になります。

何年もかけて強くて健康な種にしていきます。
- その土地の気候・風土によって育て方は様々
- 自然栽培は土地ごとの生態系を利用するため、こうしなければならない、という決まりはありません。農家さんごとに育て方は様々です。ある地域で成功した方法が、別の地域でもうまくいくとは限りません。
作り手の考え方や生き方によっても栽培方法が変わります。自然栽培をする人は、食や環境問題、ライフスタイルに対して意識の高い傾向です。自分なりの哲学に基づいて栽培する人が多くいます。
自然栽培のメリットとデメリット
自然栽培にはメリットとデメリットがあります。
自然栽培のメリット

- 環境にやさしい
- 野菜本来の味を楽しめる
- 資材費が安く済む
環境にやさしい
自然栽培は、環境に優しい栽培方法です。農薬や肥料を使いません。土壌や水源への影響を最小限に抑えることができます。有機栽培も環境に良いとされています。しかし有機栽培は、土や川や海を汚すリスクから完全には逃れられません。
動物の排泄物でできた肥料は、ほとんどが海外輸入です。使われた家畜はホルモン剤を打たれており、エサには抗生物質が入っています。当然、排泄物にも混入しています。畑が汚染されるのは必須です。
自然栽培では、有機肥料も使いません。土地のものだけで生態系が循環するような土づくりをします。

実際、自然栽培農家さん達は、環境リテラシーの高い人がとても多いの。
野菜本来の味を楽しめる
自然栽培は作物の味や風味を最大限に引き出すことができます。太陽、土、水と生態系の循環の仕組みを利用するので、より自然に近い味わいとなるからです。
強い甘みやはっきりとした味は、慣行栽培や有機栽培の野菜に多く見られます。自然栽培は、どちらかというとスッキリした味わいのものが多いです。

自然栽培農家さんの野菜宅配を、いくつも利用しましたが、どれも本当に美味しかった!
資材費が安く済む
自然栽培は資材費を安く済ませられます。農薬や肥料を使わないからです。令和2年度の国の調査で、全国の農家の肥料費、農業薬剤費が全費用の13%だったという報告もあります。
自然栽培なら肥料費、農業薬剤費はかかりません。自然栽培ならではの大きなメリットです。

すべてを一から揃えなければならない新規就農の人たちに、お勧めの農法ね。
自然栽培のデメリット

価格が高い
自然栽培だと作物の販売価格が高くなります。農薬や肥料を使わない分、手間がかかるからです。
- 農薬の代わりにかかる手間…虫に食べられないように防虫ネットを張ったり、病気になった葉を剪定したりする作業。
- 肥料の代わりにかかる手間…刈り取った草や緑肥などを利用し、微生物を活性化させる。

自然栽培は慣行栽培より時間と労力がかかるから、販売価格が高くなるのね。
成長がゆっくりに感じる
自然栽培は作物の成長がゆっくりに感じます。しかし、実は自然栽培の方が本来の成長速度です。
慣行栽培は化学肥料を使うので作物の成長が早くなります。一方自然栽培は肥料を使わないため収穫までに時間がかかり、畑の効率的な活用が難しいです。

自然栽培は作物本来の成長速度だけれど、慣行栽培と比べると収穫が遅く感じるってことね。
自然栽培とその他の栽培方法との違い
自然栽培のほかにも様々な栽培方法があります。慣行栽培、特別栽培、有機栽培が主なものです。栽培方法の違いについて以下の表にまとめました。
項目 | 農薬 | 肥料 | 成長速度 | 収量 | 価格 | 認証制度 |
---|---|---|---|---|---|---|
慣行栽培 | 有り | 有り | 速い | 多い | 安い | なし |
特別栽培 | 慣行栽培の使用回数の5割以下 | 慣行栽培の使用量の5割以下 | 速目 | 多目 | 安目 | 基本なし |
有機栽培 | なし(一部使用可) | 有機肥料 | 遅目 | 少な目 | 高目 | 有機JAS認証 |
自然栽培 | なし | なし | 遅い | 少ない | 高い | なし |
基本的に「慣行栽培→特別栽培→有機栽培→自然栽培」の順で農薬・化学肥料の使用が減り、収量も減り、価格は高くなっていきます。自然栽培は他のどの栽培方法よりも、より自然に近い形で育てようとするため、環境や健康に安心感が持てますが、その分成長が遅く収量が不安定です。
自然栽培の農作物がおすすめな人
自然栽培の農作物がおすすめな人は、以下の人達です。
- 安心できるお米や野菜を食べたい
- 健康に気を使いたい
- 自然環境を守りたい
安心できるお米や野菜を食べたい

自然栽培の農作物は、安全な食生活を送りたい人に向いています。自然栽培のお米や野菜は、他の栽培方法より安全性が高いです。農薬や肥料をまったく使わないため、健康への意識が高い人に注目されています。残留農薬の心配が少なく、食品の安全性を気にしている人にお勧めです。
健康に気を使いたい
健康を意識する人達は、毎日の食事にとても気を遣っています。食材選びはとても大事なので、自然栽培のお米や野菜は健康に配慮する人にお勧めの選択肢です。農薬も肥料も使わず、自然の生態系を最大限に利用しているため、体に優しいと人気が伸びています。

お米や野菜は毎日のように食べる食材。長期的な健康づくりのためにも自然栽培の農作物をたくさん食べてほしいな。
自然環境を守りたい
自然栽培のお米や野菜を選ぶことは、自然環境を守る助けになります。農薬も肥料も使わず、自然の力を利用して作られる栽培方法は、土壌の健康を維持したり、生物を守るためにも役に立つからです。

自然と共に生きる農法って、なんだかロマンを感じますね。環境問題に対して「何かできることをしたい」という人におススメの栽培方法です。
まとめ

自然栽培は農薬も肥料も使わない栽培方法です。細かい決まりはありませんが主に以下の4つを特徴としています。
- 農薬、肥料を使わない
- 耕さない(不耕起)
- 草や虫と共生を図る
- 種は買わず自家採取する
農薬や肥料を使わない代わりに、自然の生態系のしくみを最大限に生かして作物を育てます。自然栽培は「体に良い」「安心安全」というだけでなく地球の環境改善に大いに役立つと注目されている農法です。
自然栽培のお米や野菜は、食や健康だけでなく環境問題に関心の高い人の間で人気があります。「自然との調和」「自然に寄り添った生き方」など、今流行りのナチュラル志向を満たす選択肢としても、さらに人気が高まっていくことは必須でしょう。