【マンガ解説】有機栽培は無農薬じゃない!?有機栽培と無農薬栽培の違い

【マンガ解説】有機栽培は無農薬じゃない!?有機栽培と無農薬栽培の違い
マンガタイトル「『無農薬』だけで決めないで~野菜の妖精とミドリのお話vol.5~」
<マンガ1コマ目> ミドリのスマホがピロリんと鳴る。 ミドリが「あっ、明日は有機野菜が宅配で届く日なの。発送しましたってきた!」と言う。すると友人は「へぇ、そうなんだ。でも有機栽培って無農薬とは限らないのよ。知ってた?」と言う。 ミドリは「ええっ!」と驚いてショックを受ける。
<マンガ2コマ目>友人は自分の畑で獲れた野菜をかかえながら自信満々でこう言う。「その点、うちの畑は完全無農薬だから、有機より断然いいわよ!(家庭菜園だけど。)」 「えー。」と目を輝かせるミドリ。 すると誰かの大きな声が響き渡る。「ちょっと待ったーっ!!」
<マンガ3コマ目>ぽんっと現れたのは、野菜の妖精の菜々ちゃん。 菜々ちゃんはこう言う。「無農薬かどうかだけで比較するものじゃないのよ。まったくもう!今から有機栽培と無農薬栽培の違いについて分かりやすく教えてあげる!」

 有機栽培は無農薬じゃないのよ!などと声高に言われることもありますが、基本的には無農薬。ただし使用される場合もあるということです。じゃあどんな場合に使われるの?その時使われる農薬は?そもそも有機栽培って?

 この記事では有機栽培とは何か、そして無農薬栽培とは何か。両者の違いなどをわかりやすく解説しています。ひとつひとつじっくりと見ていきましょう。

★この記事の執筆者★

ミドリのイラスト
ミドリ
食品・農業系ライター。元自然食品店勤め10年のオーガニックコンシェルジュです。畑作業が趣味。
菜々ちゃん
(野菜の妖精)
・ミドリの食の師匠(?)
・野菜にまぎれて
 やってきた妖精

有機農業とは

「有機野菜は、農薬や化学肥料を使わずに作られた野菜よ。」と説明する菜々ちゃん。農薬と化学肥料にバツ印が付いているイラストを指差し棒で示す菜々ちゃんのイラスト。

有機農業は法律によってこう定義されています。

・化学的に合成された肥料及び農薬を使用しない
・遺伝子組換え技術を利用しない
・農業生産に由来する環境への負荷をできる限り低減する

(参照)https://www.maff.go.jp/j/seisan/kankyo/yuuki/

 有機農業は環境に配慮し、農業生態系を守るための農法です。その結果、人にとっても安全性の高い作物であることが期待されています。

有機JASマークとは

「勝手に『有機』や『オーガニック』と名付けて販売してはいけないの。」と言う菜々ちゃんのイラスト。有機小松菜と記された小松菜をかかえながら「えっ、許可いるの?」という生産者のイラストが添えられている。

 「有機〇〇」「オーガニック〇〇」などと表示して販売するには、「有機JAS」に適合しているかを登録認証機関に認証されなければなりません。法律で認められた事業者だけが有機JASマークを貼ることができます。

実際に有機JASマークが貼られた野菜の画像
太陽と雲と植物をイメージしたマークです。

※有機JASは、Japanese Agricultural Standards(日本農林規格)の略。JASは農林水産大臣が定める食品や農林水産分野の国家規格です。

有機栽培でも農薬は使える!? 

「どうしても必要な場合なら使ってもいい農薬があるのよ。」と言う菜々ちゃん。たくさんある農薬の中からひとつだけ〇印が付いた農薬を指している。

有機栽培とは無農薬である、と思われていることも多いようです。たしかに農薬を使わないことが基本となっていますが、どうしても必要なときに限り一部の農薬なら使うことができます。ただし天然由来でなおかつ国が認定したものに限ります。

ミドリ
ミドリ

農薬がどうしても必要なときって?

菜々ちゃん
菜々ちゃん

作物に重大な被害が出る危険がせまっている時よ!農薬以外の方法じゃ病害虫や雑草にやられてしまうような時は、使わざるをえないってこと。

 もちろん、有機栽培かつ完全無農薬でがんばっている生産者さんもいます。使用が許されているからといって、必ずしも農薬を使っているわけではありません。

無農薬栽培とは

「無農薬栽培はもちろん、農薬をまったく使わない栽培方法よ。」と説明する菜々ちゃん。「例外はないのね。」と言うミドリ。

 確実に無農薬なら、有機栽培よりこっちの方がいいんじゃない?と思われた方もいるでしょう。ですがこれも「確実」とはいえません。無農薬栽培は、生産期間中まったく農薬を使用せず、作物を栽培する方法です。しかしその土壌に以前の農薬が残っていたり、近隣の畑から農薬が飛散してくることも考えられます。有機JASのように検査・認証されたものではないので、本当に完全無農薬なのかは判断が難しいところです。

菜々ちゃん
菜々ちゃん

ちなみに「無農薬」と表示することは禁止されているのよ。

ミドリ
ミドリ

えっ、どうして?

菜々ちゃん
菜々ちゃん

農家さんにとっては「農薬を使わずに作った」って意味だけど、消費者にとっては「野菜に残留農薬がまったく無い」って意味にとられるからよ。

ミドリ
ミドリ

そっか、野菜に農薬を使わなくても農薬がついちゃう可能性はあるものね。

菜々ちゃん
菜々ちゃん

そう!隣の畑の農薬が飛んできたり、なんらかの原因で付着することはあり得るわ。

有機栽培と無農薬栽培の違い

「あれ?じゃあ、どちらも『農薬の可能性はある』ってことよね。結局どっちを選んでもおなじ?」と言うミドリ。有機のナスと無農薬のナスをかわるがわる見ている。


 そんな風に感じる人もいるでしょう。ですが農薬の有無だけで比較するようなものではありません。

 有機栽培は細かい決まりと厳しい基準をもとに第三者機関が認定をするものです。許可されている農薬以外は使われず、化学肥料も禁止されています。一方で無農薬栽培は栽培期間中に農薬を使わないというだけで、特に基準はなく第三者が認定することもありません。化学肥料が使われている可能性もあります。

菜々ちゃん
菜々ちゃん

ちなみに「無農薬」という表示は禁止だけど「農薬不使用」ならOKよ。

ミドリ
ミドリ

えっ、同じじゃない?

菜々ちゃん
菜々ちゃん

不使用ってことは「使用していません」という意味でしょ。「付着していません」という意味ではないもの。

ミドリ
ミドリ

なるほどね。

慣行栽培、減農薬栽培、特別栽培、自然栽培について

「減農薬栽培はなんとなく分かるけど、『慣行栽培』とか『特別栽培』って…?」と言うミドリ。特別栽培米のイラストとそれを見ながら「特別栽培米ってよく見るよね」とつぶやいている。

 慣行栽培、減農薬栽培、特別栽培、自然栽培…といろいろな栽培方法がありますが、名称だけでは何のことだかわからないものもあるでしょう。

慣行栽培
いわゆる「普通の」農業

 その地域で農家の多くが行っている「一般的な栽培方法」です。現代では農薬や化学肥料を使うことが当たり前なので、それが慣行栽培と言えるでしょう。ということは農薬や化学肥料が発達していなかった昔は、より自然に近いかたちでの栽培方法が慣行栽培だったわけです。
菜々ちゃん
菜々ちゃん

「一般的な栽培方法」って時代とともに変わるよね。国や地域によっても違うでしょう。

減農薬栽培
その名の通り、農薬を減らしているということ

 慣行栽培に比べて農薬を減らした栽培方法です。ただし何を基準に減らしたのか明確ではありません。使用回数を減らしたということなのか、それとも残留農薬の割合を減らしたということなのかが不確かです。そのため「減農薬」の表示は禁止されています。
ミドリ
ミドリ

使用量が少ないんだと思い込んで買ってたなぁ。でも残った農薬の割合が少ないと思って買う人もいるのね。

特別栽培
減農薬等への関心の高まりから生まれた

 以前は農薬や化学肥料の節減に関して、各生産者が独自の基準で表示をしていました。そのことが少なからず消費者に混乱をまねいたため、基準が設けられることとなったのです。
 特別栽培とは、その地域の慣行レベルにくらべて、節減対象農薬の使用回数が50%以下、化学肥料(窒素成分量)が50%以下で栽培することです。同じ地域かつ同じ農産物との比較になります。
化学肥料の窒素成分が2分の1以下、削減対象農薬の使用回数も2分の1以下ということをイラストで分かりやすく説明。菜々ちゃんがそれを指しながら「どちらも削減しなければいけないのよ。」と言っている。
ミドリ
ミドリ

有機栽培みたいに認証制度があるの?

菜々ちゃん
菜々ちゃん

うーん、難しい質問ね…。一応、農林水産省の表示ガイドラインに沿っていれば「特別栽培農産物」と表示できるわ。

ミドリ
ミドリ

一応?

菜々ちゃん
菜々ちゃん

自治体が色々なかたちで認証制度を設けているの。だから表示をしたければまずはその地域の自治体に確認することね。

自然栽培
肥料すら使わず自然の力だけで育てる

 農薬や肥料を一切使わず、自然の力だけで作物を育てる栽培方法です。太陽、空気、水、土壌などの自然界の生態系が持つ力を活かし、農地に棲む生き物が肥料や農薬の代わりを果たすように農地のシステムを整えます。
ミドリ
ミドリ

農薬はともかく、肥料を一切使わないなんて…そんなの信じられないな。

菜々ちゃん
菜々ちゃん

ふふ、確かにそうね。でも実際そうやってたくさんの農家さんが作物を育てているのよ。

 自然栽培は化学的に解明されていない部分も多く、栽培技術も確立されていません。土づくりに長い年月がかかるうえに他の栽培方法よりも各段に収量が少ないのが現状です。ただ生産者によっては慣行栽培に匹敵する収量を上げているところもあり、今後の研究による解明が期待されています。

慣行栽培特別栽培有機栽培自然栽培
農薬有り5割以下
(使用回数)
国が認定したものなし
化学肥料有り5割以下
(窒素成分量)
なしなし
収穫量標準やや少ない少ない少ない
販売価格標準やや高い高い高い
第3者機関
による認定
なし有り
(自治体による)
有りなし

慣行栽培はやめられない

「色んな栽培方法があるけれど、慣行栽培がダントツに多いのよ。」と説明する菜々ちゃん。「どうしてみんな変えないの?」と聞くミドリ。

 現在、日本の農家の半数以上が慣行栽培をおこなっています。有機栽培など環境に配慮した農法だとどうしても収穫量が少なくなるため、今すぐ慣行栽培から切り替えるのは現実的ではありません。手間もかかり人手も多く必要になります。日本の全人口を養うにも、農家が生計に立てるにも支障をきたすでしょう。

「環境に配慮した」農法のデメリット

  • 収穫量が少ない(有機は慣行の2割減)
  • 手間がかかる
  • コストがかかり販売価格が高くなる

ポイントブロックタイトル

農薬は人体に問題ないという考えもある

 
 農薬は安全性が証明されているから大丈夫、という声も聞こえてきます。用法・容量を守っていれば問題ではないのではないかと。確かにそうかもしれません。最近の農薬は人体への残留性が低く、比較的早く分解され体外へ出てしまうとも聞きます。

ミドリ
ミドリ

農薬も進歩しているのね。

 一方で海外では禁止されているのに、日本では使用が許可されているものもあります。2017年には、小麦を輸入するためにアメリカの基準値に合わせて、残留農薬の基準値を大幅に下げる、ということがありました。政治的要素もからんで事態は複雑です。

環境負荷が少なく、持続可能な農業を応援しよう

意識の違いが未来を変える

 有機栽培やその他の農法もまだまだ発展途上。いい面もそうでない面もあるのが現状です。それでも携わる農家さんたちは環境に対して意識の高い人が多いでしょう。そういう人が増えれば増えるほど、そして私たちが体に良いもの、環境に良いものを求めれば求めるほど、技術が発展していく原動力になる。「意識」の違いが未来を変えていくに違いありません。

ミドリ
ミドリ

そっか。じゃあ、この栽培方法じゃなきゃダメ!なんて言うより、環境のことを考えて頑張っているところは全部応援したいな。

菜々ちゃん
菜々ちゃん

そうね、消費者の意識ってとっても大事だもの。

環境に配慮して作られた野菜は宅配が一番!

 というわけで私は環境に配慮して育てられた野菜をなるべく買うようにしています。ですが、そういった野菜はまだまだスーパーには少ないのが現状。品数多くそろっているのはやはり野菜宅配ですね。

 有名どころはオイシックス、大地を守る会、らでぃっしゅぼーや等。農家さんからの産地直送なら食べチョク等もおすすめです。詳しく知りたい方は、下記の記事を参考にされてくださいね。(ちなみに私は産地直送サイトが一押しです!)

農家さん直送!無農薬・有機野菜宅配なら、この産地直送サイトがおすすめ!

無農薬・有機野菜宅配おすすめ9選!目的別であなたにピッタリが見つかる

実際に送ってもらった野菜セット。食べチョクコンシェルジュが選んでくれた農家さんの野菜
実際に購入した野菜セット

 環境に配慮された野菜はとっても魅力的ですが、やはり値段がお高め。私は無理せず、慣行栽培の野菜を買いつつも、月に2回、農家さん直送の有機野菜などのセットを宅配で購入。できる範囲で応援中です。

ミドリが「からだにもココロにも環境にもやさしい!それが野菜宅配ね!」と言って、菜々ちゃんが「野菜宅配でステキな出会いを!」と続けて言っているイラスト。背景には畑の風景をバックに野菜を手にする笑顔の農家さんたちがいるイラスト。